

見越し入道(みこしにゅうどう)
道というのは、何か我々のあずかり知らぬ場所にでも繋がっているので御座いましょうか、
道の上で奇妙なコトが起こるとか、異形のモノに出会うという「路傍の怪」というのは昔より多く伝えられております。
人気のない夜道や坂道を歩いていると、前方にぽつり、小坊主がひとりこちらを見ている。
少々不気味に思っていると、その小坊主が見る見るうちに伸び上がり、天を衝くほどの大入道になる。
それでも止まらずぐんぐん伸びて、やがて本当に天までとどこうかという巨大な化物となって、こちらを見下す。
これは見越し入道という妖怪で御座います。
この時、どんどん伸びていく見越し入道を目で追うと、見上げるだけでは足りなくなり、
やがて体をのけぞらせてひっくり返ってしまいます。
こうなると見越し入道の術中に嵌まり、その人は病みついてしまうと言いますが、
伸び上がり始めた時に先手を打って「見越し入道、見越した」と言い放つと、
見越された見越し入道は縮んで消えると言われております。
猫股(ねこまた)
怪を成す獣と言えば、狸と狐、そして猫で御座います。
猫は昔から魔性のモノと言われており、家に不幸があった時などは、猫が遺体の側に近寄ることを禁忌としたそうで御座います。
何でも猫の魂が遺体をのっとり、遺体が起き上がることがあるそうで。
年を経た魔性の猫は、尾っぽが二つに割れて股となり、
様々な怪を成す猫股になると言われております。
この猫股、手ぬぐいを被り踊るくらいは序の口で、人語を発する、変化する、人に取り憑く、人を喰らうとやりたい放題で御座います。
ですから、昔は飼い猫が猫股になって害を及ぼさぬよう、飼う前に「お前は3年飼ってやる」と猫に言い、期間限定で飼ったとか。
やがて約束の年が過ぎると、いつの間にやら猫はいないくなったそうで御座います。
濡れ女(ぬれおんな)
古来より蛇は執念深いと言われております。
蛇と争った時は止めを刺さなければ、手負いの蛇は必ず復讐にやって来る。
昔、越後と会津の境に流れる川で、船が何艘か航行しておりましたが、うち一艘がはぐれてしまいました。
そのはぐれ船が仲間と合流すべく彷徨っていると、遠方の川沿いで長い髪の毛を洗う女がいたとか。
船を進ませ、女の姿がはっきり見えた途端、船員たちは悲鳴をあげて櫓を漕いで、その場より離れたそうで御座います。
漸く仲間の元に合流できたはぐれ船、その船員の青ざめ怯える様子を見た他の船の船員が、
「如何致した、大蛇でも見たか」と尋ねると、皆口をそろえて「濡れ女を見た」と言ったという。
「そんなモノが居るわけはない」はぐれ船の船員が止めるのも聞かず、件の場所へ向かう仲間たち。
はぐれ船の船員は怖くなり、自分たちの村へ帰る途中、背後から仲間たちの断末魔の悲鳴が聞こえたそうな。
以来、仲間たちは二度と帰ってこなかったので御座います。
村の古老に話を聞くと、濡れ女の尾は三町(327m)あり、狙った獲物を執念深く追まわし、
どれだけ逃げても三町の尾に絡めとり殺すとか。
濡れ女は、長い黒髪と蛇の体を持つ女の妖怪で御座います。